平成15年度文化庁芸術祭参加 近藤良平×坂東扇菊 「源氏」_葵の上より_
「葵の上」の作者、世阿弥は54帖という、長篇小説「源氏物語」の中で「葵の巻」に焦点をあて、この物語の、真髄を左右する、六条の御息所を浮かび上がらせ、物語性の中にうずもれていた情念を凄絶な形で描いた。
今作品は、その「葵の上」から六条御息所の狂気に写し出された源氏に焦点をあて、さらに言葉の表現を取り除き、情景や思いのすべてを「音」と「光」と「動き」に集約させた。
能楽の自由な空間処理と大胆に時間軸を変化させる手法をパフォーマンスとして、現代に写し出す。
構成/坂東扇菊 振付/近藤良平 坂東扇菊
面 製作/有賀二郎 衣裳/岡千勢子 音響/原嶋紘平(Sonic Wave) 福田玲子 舞台監督/筒井昭義 宣伝美術/柳沼博雅(VERSO) 出演/ 近藤良平 坂東扇菊 声明 海老原廣伸 天台聲明七聲會 雅楽 築地本願寺雅楽会 チェロ 四家卯大
湯島聖堂 大成殿(国史跡)
「源氏」批評 <2003,11,13 日経新聞より抜粋>
半ば硬直した全身のラインが垂れた髪、袖、裾と長く引き伸ばされてただならぬ気配をかもしだす。情念の支配する世界への扉を開く、印象的な幕開きだ。(途中略)
そのたゆたうような体の運びに寄り添っていた近藤が、鋭角的に空間を切り進む独特の動きを閃かせはじめる。現代バレーさながらの複雑で激しいパートナリングが展開され、互いに憎みつつも情愛を再燃させずにはおれない、男女の深い業があぶり出されてゆく。(途中略)声明の肉声が舞踊の描く愛の昇華や慈しみと共振し、増幅させて、いわく言いがたい余情を残した。
_舞踊評論家 長野由紀_